SHEIN上場目論見書の数字が語る「安さの正体」

2026.08.31

おはようございます。

ディマンドワークス齊藤です。

サイズアップ、サイズアップ♪

詳しくは編集後記で…

さて、本日も

コンサル現場やイベントなどで

業界関係者の方々と話題になった

業界の気になるトピックをご紹介します。

今回のテーマは

上場目論見書が教えてくれた

数字で見るSHEINの真実

です。

少しでも

日頃のお仕事や

情報整理のお手伝いになれば幸いです。

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【目次】

1. 上場目論見書が教えてくれた

数字で見るSHEINの真実

2. 編集後記

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【1】上場目論見書が教えてくれた

   数字で見るSHEINの真実

________________________

1か月前のメルマガでは

SHEIN(シーイン)の

香港上場を前に、

数年間の独自取材で見えてきた

同社の「安さの理由」について

お伝えしました。

その後、

数百ページに及ぶ

同社の上場目論見書(PHIP)

が公表されました。

今回は、

これまでの現地取材でつかんだ情報と

目論見書を照らし合わせながら、

裏付けられたこと、

新たに見えてきたことを

独自視点でお伝えしたいと思います。

まず、SHEINは自らを

「グローバルな

オンライン・ファッション&ライフスタイル企業」

と定義しています。

約160市場に販売し、

アクティブ顧客は約2億7,300万人。

売り上げは、

2023年 約321億ドル(約5兆円)

2024年 約387億ドル(約6兆円)

2025年 約418億ドル(約6.6兆円)

へと拡大。

ZARAを展開する

インディテックスには届かないものの、

ユニクロやH&Mを上回る

世界第2位のアパレル小売企業です。

ただし、

最近の欧米政府からの

風当たりもあって、

成長率は鈍化しています。

2025年の営業利益は

約17億ドル(約2,690億円)

営業利益率は約4%。

一桁前半ではありますが、

しっかり利益を出しています。

2025年度(12月期)の

地域別売り上げ構成は、

欧州が約35%、

米国が約24%、

その他地域が約41%。

いまや最大市場は

米国ではなく欧州です。

売り上げの内訳を見ると、

自ら商品を仕入れて売る

「自社販売」が約89%。

残る約11%は、

2022年に始めた

「マーケットプレイス」

による収入で

第三者出店企業から

手数料を得る事業です。

プラットフォーマーである

TEMUとは違う、

と前回お伝えしましたが、

収入の大半を

自社販売で稼ぐ一方、

SHEINもTEMUのような

マーケットプレイスを

急速に拡大しているようです。

同事業の手数料率は

取引額のおおむね10~20%。

そこから逆算すると、

マーケットプレイスの

推定取引総額(GMV)は、

自社販売の売り上げに

かなり近い規模まで

膨らんでいる可能性があります。

顧客から見れば、

「自社商品半分、

マーケットプレイス半分」

に近づいているわけです。

商品数は、

自社アパレルだけで

200万スタイル超。

1日平均約4,700もの

新作をリリースするとしています。

ただし、

この「スタイル」は

業界でいう品番やSKUではなく、

色別の表示単位である、

FKUに近い数え方

のようです。

さて、ここからが

取材情報と開示数字との

整合性の確認になりますが、

私は前回、

SHEINの内部に精通した

関係者への取材に基づいて

「SHEINは

7つの自社工場を持つ」

とお伝えしました。

ところが目論見書には、

自社工場についての記述はなく、

約7,500社の契約メーカーから

完成品を仕入れる会社

として描かれています。

生地については、

SHEIN自身が

生地屋と価格を交渉した上で、

メーカー側に購入させる

建て付けです。

自社工場が実際に

サプライチェーンのどの部分を

担っているのか。

この点は引き続き

取材で確認したいと思います。

一方、

前回お伝えした

「小回りの利く調達」

については、

しっかり裏付けられていました。

まず、

1スタイル

100~200枚という

小ロットで投入し、

売れ行きの良いものは

最短5日で追加生産する。

需要を確認してから

つくり足す仕組みです。

その結果、

在庫回転日数は

直近四半期ごとに見ても

35日前後。

広州・番禺の産地集積を生かし、

稼働に余裕のある工場へ

発注を自動配分し、

何千もの工場を

テクノロジーでつなぐ姿も

明記されていました。

プロモーションは、

世界中のインフルエンサーとの協働と

成果報酬型のデジタル広告が軸。

2024年の広告費は約40億ドル、

マーケティング費は

売上高の約15%です。

そしてPLを見て

まず驚いたのが、

売上総利益率(粗利率)が

約68%もあることです。

先月のメルマガでは、

現地取材から推定した

販売価格と工場出し原価をもとに、

「原価率は比較的高く、

しまむらやワークマンに近い構造」

とお伝えしました。

しかし、開示されたPLは、

私の見立てとは食い違います。

もっとも、

この高い粗利率には

理由がありそうです。

ひとつは、

GMVの10~20%相当を

手数料収入として計上する

マーケットプレイス売り上げには、

商品原価が計上されていないこと。

これを除いて

自社販売品だけの粗利率を推計すると、

約64%まで下がります。

そして、

もうひとつが重要です。

SHEINは、

商品を取引先から

自社倉庫まで運ぶ物流費や、

倉庫から顧客へ届ける

物流関連費用を、

「売上原価」ではなく、

販管費の

「フルフィルメント費」

に計上しています。

このフルフィルメント費の

売り上げに対する割合が

約46%と高水準です。

他社では売上原価に含まれる費用の

一部がここに入っている可能性があります。

業界他社と同じ仕訳に直せば、

SHEINの粗利率の見え方は

変わってきそうです。

このあたりは今後の取材で

明らかにしたいと思います。

次にBS、

貸借対照表です。

まず、

銀行借入がほぼゼロ。

現金と短期投資を合わせた

手元資金は、

約148億ドル、

=約2.3兆円もあります。

店舗を持たない同社は

固定資産も

売上規模に比べれば軽い。

一方、

自己資本は

帳簿上マイナスですが、

これは上場時に株式へ転換される

優先株を負債として計上しているためで、

上場によって

解消される見込みです。

小ロット、短サイクルでつくる、

顧客はクレジットカードなどで

すぐに決済する、

過剰な在庫を抱えない。

要するに、

「稼いだキャッシュで自走できる」

財務体質です。

そして、ここが今回、

いちばんお伝えしたい点ですが…

SHEINは、

取引先への支払いを

財務諸表上、

平均32~33日で行っている計算に

なります。

日本の商取引でよくある

「月末締め・翌月末払い」

なら、

取引発生から支払いまで

平均すると45日くらいでしょうか。

それと比べても、

SHEINの支払いは

10日以上早いことになります。

しかも、

この数字には

物流業者への支払いも含まれるため、

工場への支払いだけなら

さらに早い可能性もあります。

産地の工場取材でも、

これと符合する話を聞きました。

取引開始時は

「月末締め・翌月末払い」。

納期や品質の良い工場は

「月2回払い」に、

さらに優秀な工場は

「毎週払い」へと

格上げされていくという

独自の支払いインセンティブ制で

工場のモチベーションを高めます。

全取引先の加重平均が

32~33日ということは、

相当な取引額が

この「早い支払い」の対象に

なっていると考えられます。

取材で聞いていた

仕入れ先ランク制度の存在が、

開示数字からも

裏付けられたわけです。

さらに、

SHEINのキャッシュが

一巡する早さ、

キャッシュ・コンバージョン・サイクル

(CCC)を見てみると、

在庫 約36日

入金待ち 約9日

仕入れ・物流への支払い 約33日。

つまり、

業界大手と比べても

支払いが早いにもかかわらず、

運転資金として

ほとんど現金を寝かせていません。

ここは、同社の特徴を表す、

そして、既存のチェーンストアとは違う、

とても重要なポイント

だと思っています。

多くの小売業は、

サプライヤーへの支払いを

引き延ばすことで

手元資金をつくります。

ところがSHEINは、

むしろ逆です。

工場には早く払いながら、

運転資金をほぼゼロに抑えている。

その原資は、

取引先を叩くことではなく、

顧客からの早い回収と、

スピーディーな在庫回転、

そして店舗を持たない

身軽な構造にあります。

「安さは、誰かの犠牲の上に

成り立っているに違いない」

そう考える人は

少なくありません。

けれど、

少なくとも

「支払い条件」

という点においては、

数字はむしろ逆のことを

語っているようです。

もちろん、

SHEINに問題がない

という話ではありません。

それどころか、

目論見書には、

生々しい事業上のリスクが

並んでいます。

米国・EUの

少額免税の撤廃と

関税引き上げ。

2025年5月以降は

米国売り上げが減少。

米FTCの調査、

フランスでの制裁金。

TEMUとの訴訟。

40件を超える

著名ブランドとの

知的財産侵害訴訟。

さらに、

将来リスクとして、

サプライチェーンの

労働・人権問題、

マーケットプレイス出店者の不正、

そして

中国への生産集中

も挙げています。

以前のメルマガで

「上場すれば説明責任が問われる」

とお伝えしましたが、

まさにその通りの

情報開示が始まったわけです。

安さの裏側を、

単純に

「誰かの犠牲」

と決めつけない。

この姿勢は

前回と変わりません。

一方で、

上場企業として

山積する事業リスクに

どう具体的に対応していくのか。

ベールを脱いだ今、

むしろ、その問いは

深まった気がします。

今回は、一旦ここまで。

上場後は

さらに開示が進み、

メディアも取り上げる

と思いますので、

引き続き

注目していきたいと思います。

さて、今回の情報開示によって、

皆さんのSHEINに対する見方は

どう変わったでしょうか?

ご意見・ご感想は、お気軽に。

taka-saito@dwks.jp

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【2】編集後記

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今夏の休暇は

昨年に続いて

北海道の道東で過ごしました。

エンジョイしたのは

3年目になる渓流釣り

と温泉巡り。

3つの川で、たくさんの

ニジマス、アメマス(※1)、オショロコマ(※2)

に遊んでもらいました。

※1 アメマスは

海に下って大型化し、

産卵のために川に戻って来たイワナ

※2 オショロコマは

北海道固有のイワナの一種

今回は3つの魚種とも

過去最大サイズを更新しました。

もっと大きいサイズを釣った先輩方の話は

いくらでも聞きますが…

比べるのは

他人とではなく過去の自分と

と心に銘じ

自身の上達と成長を楽しんでいます。

来年も記録更新を目指します♪

今回も最後までお読みいただき、

ありがとうございました。

次回もお楽しみに!